素顔のひとり言

予知能力の限界

私自身に関しての予知はたくさん経験しているが、良いことは少なく、悪いことに関しての方が圧倒的に多い。しかも悪いことの場合、或る種の感情を伴った予知となってしまうので、精神的にも滅入ってしまうようなケースが多い。

それはまだ私が20代前半で両親と一緒に暮らしていた頃、母親が私に急きょ引っ越すことを告げた。それは親戚からもたらされた話で、伯父が亡くなったので、その持家に住まないか、と云う誘いであった。私は本能的に危険を予知して、その家へと引っ越すことを反対した。「どうして? あんな立派な家に住めるのよ。家賃もいらないのよ。この家はもう嫌なのよ」

そう云われると、収入の乏しい私は何も云えなくなった。確かに客観的に見れば良い話なのだ。当時の住まいは隙間風が入ってきて寒く、二階の住人たちの怒声が夜になると響いた。叔父の家は一度だけ行ったことがあったが大豪邸で、その一部を商売に用い、一部を自分たちの居住用とし、三分の二くらいの部屋を何組かの夫婦に貸していた。その居住用の部分を空けて置くのはもったいないので…と云う誘いなのだ。母親が乗り気になるのも無理はなかった。

ただ、私はどうしてもその家に引っ越して行くことに抵抗があった。何が…? と訊かれてもハッキリとは云えないのだが、何かが悪いことが起こりそうな予感があったのだ。私が反対したことで母親は戸惑っているようだったが、その晩二階の住人の怒声が夜遅くまで響いたことで迷いは払われた。翌朝、母親は「解ったでしょう」と云う目で私を見た。私は頷くしかなかった。

引っ越した家は、それまでとは異なり広く静かで年数は経っているが、設備も整っていた。浴室も広くバリアフリーで優しい造りになっていた。私の自室は二階で広く客間として使われていた立派な部屋を与えられた。

けれども半年も経たないうちに悲劇は起きた。その事件が起きる4、5日前に、再び私に予感が走った。大量の虫が室内に出現したのだ。私は母親に「やっぱりここは良くないよ。何か起こるよ。引っ越そう」と迫った。母親は動じることもなく「お前は神経質だねえ」と云って、掃除機を使って、次々に虫を吸い取って行った。

それから2、3日して私は、母親が頭が痛い、と云って昼間からベッドにもぐりこんだことに再び嫌な予感を持った。けれどもどうして良いか解からず、黙っていた。

その日は孫娘が自宅に戻って、母親は私にお茶を淹れながら「あの子が帰ると静かだねぇ」とホッとしたような表情で云った…。

そのあと事件は起こり、母親は二度と帰らぬ人となった。事件そのものを書き出すと長くなるので書かない。

私は、今でもあの頃の自分の発言、及び行動は正しかったのだろうか…と自分に問い直すことがある。私は何かが起こる、と予感していた。確実に起こる、と予感していた。ただ、それが何なのか、どうなってしまうのか、予見できなかった。だから恐怖感を抱きながらも、どうすることもできなかった。

こういう体験は、実はこのことだけではなくて何度もしてきている。予感は確実にあって、それなのにどうすることも出来ない…自分自身に対しての無力感にうなだれてしまうこともある。人を救うと云うことは、今更ながら本当に難しい。


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