今日の迷言・余言・禁言

「肢のない妻」がお出迎えする部屋

「テーブル美術館」シリーズと呼ばれるフィギュアがあるらしい。つまり、通常なら美術館にあるような芸術作品を、自宅に飾って楽しむことが出来るシリーズだ。まあ美術の名画レプリカとほぼ同様な彫像作品だと思えば良い。私も絵画のレプリカなら、クリムトなどの作品をいくつか所蔵している。ただフィギュアは小さいし、アニメ的なものが多く、とても“芸術作品”という気がしないので、購入したことはない。ところが、このほど日本画の名画として知られる江戸時代の画家・丸山応挙作「幽霊図」が何んと“絵”としてではなく“フィギュア”の立像として発売されるらしい。丸山応挙が描いた日本画「肢のない幽霊」の姿を忠実に再現してあるのだという。「テーブル美術館」では、これまでにも“ミロのビーナス”や“ロダンの考える人”なども制作販売していて、それなりの実績を残している。まあ出来栄えとしては“今一つ”な気がしないでもないが、自宅の棚やテーブルに飾るものとして考えると、妥当な“大きさ”、“お値段”、“出来栄え”であるのかもしれない。ちなみに、この「肢のない幽霊」は6480円。まさに“お手頃価格”。ただ元々この「幽霊図」は応挙自身が、夢に出てきた妻の姿…を描いたものとされる。妙にリアルなのは、そのせいもあるのだ。したがって、それを忠実に“肢のない立像”として再現した作品は、或る意味で丸山応挙氏の“亡き妻”を自宅に招き入れるようなものなのだ。おそらく、これを購入される方にはマニアックな独身男性が多いような気がするのだが、深夜に自宅に戻って灯りを点けたら、透明感のある「肢のない妻」が待っている構図は、ちょっと不気味でもあり、それでいながらどこか“心温まる世界”のような感じがするのはなぜだろう。


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