今日の迷言・余言・禁言

「時代」に翻弄されていく人々

マスコミの多くが「脱ハンコ」を好意的に報道した。その時にも思ったことだが「時代」の変化は、時にその流れの中で“必死に抵抗する人々”をつくり出す。“抵抗せざるを得ない人々”をつくり出す。「脱ハンコ」の場合には、印鑑(印章)に関係する仕事をしている方達だ。昨日、日本一の印章の産地として知られる山梨県の長崎幸太郎知事が、河野太郎行政改革相が「押印廃止」の印影と印鑑を掲げて、それが平井卓也デジタル改革相からのプレゼントであることを示した画像を添付し、それらに対し「ただただ限りない嫌悪感」と投稿。印鑑に携わるすべての人々に対する“敬意”というものが欠けた行為であると批難し「土足で戦場の死体を踏みつけているようなシーン」と表現している。確かに、かつて山梨は「印章王国」として栄華を誇っていた。私自身、現在も用いている本名の方の印鑑は山梨県で作成して頂いた。今から45年ほど前のことである。それ以降、私は何回も印鑑作成を依頼したが、最初のが一番気に入っていて、本名の時には未だにそれを使用している。「脱ハンコ」は、確かに行政などの俗にいう“役所仕事”に必要なことは論を待たない。会社関係でも、今はどうか知らないが、昔は必ず上司の「ハンコ」が“有休”一つ貰うにも必要だった。時代の流れ的なものから言えば「脱ハンコ」それ自体の選択は正しい。けれども、それに関わる人達には、それに魂を込めてきた歴史というものがある。これ見よがしに「押印廃止」の印影を見せられたら、わざわざ“そういう印鑑”をつくってプレゼントし、プレゼントされて悦んでいたら、いたたまれない気持ちになるのは当然である。おそらく、そういった人達の心情まで汲み取れなかったのだと思うが、残念としか言いようがない。「時代」はさまざまな事情から、さまざまな仕事や職業を切り捨てていく。今年など“印章業界”だけでなく、別な理由で“外食産業”や“旅行業界”や“アパレル産業”など、さまざまな業種や仕事に致命的打撃を与えている。過去の栄華も「時代」の濁流には無力なのだ。


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